自己破産のメリット・デメリットを徹底分析!

借金がかさんで返済が苦しくなった場合や収入がなくなってしまった場合、自己破産によって借金問題を解決できる場合があります。自己破産とは、債務整理のひとつです。債務整理には「任意整理」、「個人再生」、「特定調停」、「自己破産」の4つがありますが、返済能力が全くない場合は、自己破産を検討してみましょう。

自己破産を考えてみよう。

自己破産は、経営している会社の採算悪化、勤めている会社の業績悪化による退職、病気、少額でのカードローンが積み重なって、借金問題が立ち行かなくなったときに、生活を再生する最終手段として残されている方法です。そのため、破産をすると「戸籍に載る」「会社や学校など周りの人に知られてしまう」「選挙権がなくなる」というようなイメージをもたれがちです。しかしメリット、デメリットを正しく理解して利用すれば生活の再建と精神的な解放という大きな効果が得られます。特に返済能力がない場合は、自己破産も選択肢の一つと言えます。

自己破産すべき人、すべきでない人

まず、自己破産をすべきかどうか悩まれるかと思います。その判断基準は何でしょうか。借金を解決する方法は自己破産だけではなく、他の方法を取ることもできます。ご自身の状況と照らし合わせ判断されるとよろしいでしょう。まず、自宅や車など高額な財産を所有し利用している方は、財産が没収されることにより、車を使った仕事、送り迎えなどに影響がでることから極力自己破産は避けた方がよろしいでしょう。その場合は、財産を残したまま借金を減らせる「個人再生」をお勧めします。また、月々の返済は苦しくても返済期間を延ばして計算してみたら何とか目途が立つような方は、「個人再生」「任意整理」といった方法をお勧めします。さらに、2010年以前に消費者金融などから借り入れしていた場合は、グレーゾーン金利により過払い金が発生している場合があります。この場合、多く払い過ぎていた金利を請求することで返還してもらえます。過払い金を借金返済に充てることもできます。こうした借入のみの方は、ます過払い金での返済を考えましょう。このような状況になく、没収されるべき財産がない方、今後返済の目途が立たない方は、自己破産を考えてみましょう。

そもそも自己破産とは

自己破産とは、裁判所を通じて借金の返済義務を免除してもらう手続きです。この自己破産には2つの申立が必要です。破産の申立と免責の許可の申立で、通常これを併せて行います。破産の申立とは、裁判所に破産の手続き開始決定を求める訴訟上の行為です。免責とは 借金を帳消しにすることで、この許可を裁判所に申立て許可が下りると借金が免除されます。

免責

免責の手続きには「管財」と「同時廃止」があります。原則的には、破産手続きは、裁判所によって破産管財人が選任されその破産管財人が、破産者の財産を調査・管理・換価処分して債権者に配当することになります(管財)これに対して、破産者が財産を持っていない場合は、破産管財人を選任して手続きすることは無意味・不可能ですから、免責不許可事由※がなければ、破産手続開始と同時に破産手続が廃止されます。(同時廃止)これによって免責が許可され決定が確定すると債務の支払義務が免除されます。そもそも財産を持ち合わせていない方のためには、同時廃止の手続きによって管財より免責確定まで手続きをスムーズに進めることができます。※免責不許可事由…破産債権者を害する、破産法上の義務違反など一定の事由があると免責が不許可となる。ではまず具体的に自己破産のデメリットからみていくことにしましょう。

自己破産のデメリット

まず、自己破産には、借金返済義務がなくなるという強力な効果がある反面、いろいろなデメリットがあります。

ブラックリストに載る

自己破産をすると、信用情報機関が保管している個人信用情報に事故情報(異動情報、ネガティブ情報)が記録され、ローンやクレジットカードなどの利用ができなくなります。信用情報機関には、「CIC」(割賦販売法・貸金業法指定信用情報機関)、「JICC」(日本信用情報機構)、「全国銀行協会」の3つがあり、個人の借り入れについての信用情報を管理しています。銀行などの金融機関や信販会社などの貸金業者は、ローン審査の際に信用情報を参照します。このときに事故情報が記録されていると、自己破産したことが判明してローン審査に落ちてしまいます。俗にいうブラックリストの状態になります。これによって住宅ローン、車のローン、教育ローンなど各種ローンが利用できなくなります。自己破産によるブラックリストの期間は、「CIC」と「JICC」の場合は自己破産手続き後5年間ですが、「全国銀行協会」の場合10年になります。

基本的に財産がなくなる

自己破産は、破産者の所有する財産は、原則破産管財人という職務の人がすべて現金に換価して、債権者に平等に配当されることから、破産者が所有している財産は基本的にすべて失うことになります。預貯金、生命保険も解約されますし、不動産、車等も売却されてしまいます。ただし、生活に最低限必要な財産は、手元に残すことは可能です。預貯金、生命保険、車などの評価 が20万円までなら持ったまま破産できます。さらに現金で財産を所有している場合は、99万円まで持ったまま破産することができます。

 職業が制限される

自己破産手続きを利用すると、一定の職業に就けなくなります。おもに成年後見人、遺言執行者、各種の委員会の委員など社会的責任が高い職業や士業(弁護士、弁理士、司法書士、行政書士、公認会計士)など社会的信用も比較的高くお金を取り扱うことも多い職業、さらにお金を取り扱うことが多い公庫の役員、銀行の役員、貸金業、証券業、保険会社、宅地建物取引主任者、不動産鑑定業者、土地家屋調査士なども資格の制限を受けます。また警備関係、旅行業者、産業廃棄物業者など一見自己破産や信用と関係のなさそうな業種でも制限を受けます。ただし、その制限は一生続くわけではありません。自己破産の資格制限が開始するのは、「破産手続き開始決定後」であり、また自己破産手続きが終結した場合には、資格制限は解除されます。無事に免責がおりて借金がなくなったら、それまで受けていた資格制限も解除されます。(3か月~6か月程度)

保証人に迷惑をかける

借金に連帯保証人がついている場合、自己破産手続きをすると債権者が連帯保証人に借金の支払い請求をすることになります。こうしたケースでは、連帯保証人に対しては借金残額の一括払い請求がなされてしまうことが多く、さらに通常利息よりも高額な遅延損害金が加算されてしまうことが普通です。連帯保証人には多大な迷惑をかけることになります。

官報に情報掲載される。

自己破産をすると、政府が発行している官報に記載されてしまいます。
官報は、法律や条令、条約などの法令に関する情報や、破産者などの裁判所の情報が掲載される政府発行の機関紙です。官報はインターネット上でも閲覧することができます。自己破産手続を利用すると、官報に氏名、住所、裁判所での決定内容(手続き開始決定や免責決定など)が掲載されます。よってこの掲載によって闇金業者などが情報を利用して、自己破産手続後にDMなどを送ってくることがあります。ただし、一般の人で官報を読んでいる人はほとんどいません。官報に載ったからといって周囲に自己破産がばれるリスクはそれほど高くはないといえます。

膨大な資料が必要となる。

自己破産は、裁判所に申立をして免責決定をもらう手続きであるため、その分必要書類がとても多くなります。作成が必要な申立書、債権者一覧表、財産目録などに加え給与明細書、源泉徴収票、確定申告書、課税証明書、銀行預貯金通帳、取引履歴、保険証券、不動産登記簿謄本、固定資産評価証明書、退職金の証明書、住民票など 財産や身分関係の書類が大量に必要になります。しかも個別のケースによって必要な書類が異なってきます。そしてこれらの書類や資料に漏れがあると、裁判所は手続きを進めてくれないため、自己破産手続が進まなくなります。これらの書類を適切に集めることには非常な困難が伴うことから 自己破産手続を利用する場合は、司法書士や弁護士に手続きを依頼することが必須になります。どのような書類が必要か、どのように集めるのかわからない場合には、依頼している司法書士や弁護士に尋ねると教えてもらうことができます。

手続きが厳格なため、手間がかかる。

自己破産手続は、裁判所に免責決定をしてもらうために、裁判所の厳格な手続進行に従わないといけません。そのため、必要な時期に必要な書類を出さないといけません。また、裁判所で審尋が行われる場合には、債務者も出頭する必要があります。

手続費用が高い

自己破産手続を利用する場合には、裁判所におさめる実費と司法書士・弁護士費用がかかります。実費については、財産がない人のための簡易な手続である同時廃止事件の場合であれば、印紙代と郵便切手、官報公告費用の合計3万円程度ですが、財産がある人のための管財手続が最低限20万円予納金として必要になります。また司法書士・弁護士にかかる費用も、他の任意整理や特定調停などの手続きと比べると費用が高く、
総額の目安として、同時廃止事件で30万円、管財事件で、50万円~60万円程度になってきます。こうしたデメリットをよく確認してから検討されるのがよろしいでしょう。次に自己破産のメリットをみていきましょう。

自己破産のメリット

借金返済義務がなくなる

自己破産手続きを利用し、裁判所から免責決定が出ると、すべての借金返済義務がなくなります。消費者金融のキャッシング、クレジットカードのショッピング、リボ払い、各種ローン、銀行ローン、住宅ローンなど借入のすべての債務は自己破産によって支払い義務がなくなります。
また、「借金」とは異なる、奨学金の支払い義務、連帯保証人として責任もなくなります。さらに家賃の滞納や買掛金の支払い義務などの支払が不要になります。

手続後に返済が残らない。

自己破産をした場合に免責が認められると、すべての支払い義務がなくなり、手続後に支払いが残ることがありません。この点、「任意整理」や「特定調停」ではほとんどの借金が残り、「個人再生」でも減額ができても3年程度の支払いが残ります。自己破産は借金が0の新しいスタートを切ることができます。

生活保護を受給する場合にも利用できる。

生活保護の受給をする場合には、借金を返済することは認められていません。生活保護は、国民の貴重な税金が財源なので これを借金返済に使われては困るという行政の判断があるからです。この点で手続後も支払いの残る「任意整理」や「個人再生」などの手続きでは、生活保護の受給はできません。自己破産によって借金返済義務をなくしてはじめて生活保護の受給ができることになります。

借金額に限度がない

自己破産は、借金の金額ではなく、その人の個別の状況から借金返済が継続できるどうかという点が問題になります。よって借金が50万円以下の少額であっても支払不能という状況があれば自己破産できますし、無論1億、10億の借金があるような多額の場合でも免責を認めてもらうことは可能です。

収入の要件が必要とされない。

自己破産手続を利用する場合は、手続後に支払いが残らないことから、手続後に支払いができるかどうかなどの収入の要件は全く必要がありません。

法人でも利用できる。

会社や企業などの法人は、経営状況が悪化して倒産することがあります。この場合、会社代表者が一人だけ破産しただけでは、解決できず、法人そのものも債務整理の必要があります。その場合に、会社代表者と会社自身の借金を同時に破産を申し立てることで、同時に借金が清算され問題が一挙に解決できます。

債権者の同意が不要である。

債務整理をする場合、反対する債権者が出てくることが多いですが、その場合でも債権者の同意はいりません。裁判所に免責を認めてもらえさえすれば、返済義務がなくなります。免責不許可事由があると免責は受けられなくなる可能性はありますが、ここにも債権者の同意は要件となっていません。

債権者からの督促や借金返済が止まる

自己破産手続を司法書士や弁護士に依頼すると、借金を滞納している場合であっても、債権者からの支払いの督促が止まります。司法書士や弁護士が債務整理手続に介入した後は、債権者は債務者に直接連絡をとってはいけない旨の金融庁のガイドラインが定められています。これによって債権者からの督促から解放され、借金返済もストップするので、債務者としては精神的にも大変楽になります。

強制執行を止めることができる

借金を滞納して自己破産をしようという場合には、すでに債権者から強制執行(差押)を受けていることがあります。放置すると債権者から訴訟(裁判)を起こされてしまいます。給料なども対象になります。この場合、自己破産を申し立てて、破産手続開始決定がおりると、強制執行は効力を失うか、手続きが中止します。よって債務者は給料を受け取ることができるようになります。破産手続き中に差し押さえ対象になった給与は免責決定後に受け取る形になります。また、破産手続開始決定が出ると、それ以後に差押をすることができなくなります。また、国税局による税金の滞納の徴収も停止されます。

過払い金請求ができる

自己破産手続であっても、手続き中に 利息制限法に基づく過払い金が発見されたら、過払い金請求ができます。自己破産手続は、通常司法書士や弁護士などの法律の専門家に手続を依頼しますが、手続中に過払い金を発見したら当然に過払い金返還請求をします。

まとめ

自己破産は、借金の返済義務がなくすことで債権者に負担を強いるものである以上、債務者に相応のデメリットがあります。しかし、借金を抱え、返済能力もなく将来が立ち行かなくなった方にとっては経済的、社会的、精神的に非常にメリットが多いものです。ただ、裁判所を通して行うため専門的で、煩雑な手続きであることから、司法書士や弁護士がお手伝いできる領域が広いかと思います。このサイトがお役にたてるようであれば、ご相談ください。

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