借金の返済が厳しくなった方への救済措置が自己破産です。ですが自己破産は誰でもすぐにできるというものではありません。条件によって認可されるケースもあれば不認可となってしまうケースもあります。
自己破産できないケースをよく知っておかないと、自分ができないケースに該当してしまうこともあります。まずは自己破産をするための条件を知っておき、また、万が一自己破産が出来なかった場合にどのような方法があるのかも学んでおくと、いざという時に焦らずに済むでしょう。
自己破産が認可される条件
自己破産は債務の返済が厳しくなってしまい、支払い不能に陥ってしまっている方への法的救済措置になります。返済に追われ、食うものも食えず、電気やガス、水道は止められ、複数の金融機関から督促の電話やハガキが届く、会社にまで電話がかかってくる、そんな状況では人間らしい生活などできません。追いつめられて、うつ病になってしまったり、犯罪を犯してしまう、また自殺してしまう、なんて人も少なくありません。
そんな追いつめられた方は自己破産をすれば新しい人生をスタートできます。とはいえ、自己破産は誰でもできるもの、というわけではありません。自己破産をするにも必要な条件があります。とはいえ、本当に真面目に働いているにもかかわらず、借金で苦しんでいるという人は問題なく自己破産可能です。
≪自己破産をするための条件≫
○支払い不能状態
自己破産するために必要な条件は“支払い不能状態”であることです。いくらがんばっても返済していくのが困難だ、と判断される状況であることです。
これについては、『生活は苦しいが、なんとかしっかり返済期日には支払っている』という方は“支払い可能”と判断されることもあります。つまり、自己破産するための条件の一つには返済期限が過ぎ、“滞納”していること、となります。また、支払いが難しいが近いうちに大きな収入を得る見込みがある、という場合も認められない事があります。あくまでこれからずっと返済できない状況が続くだろう、と思われる状態でなければいけません。
また、借金が少額である場合も支払い不能状態とはみなされないこともあります。特に100万円以内の借金なら認められないケースがほとんどです。100万円なら毎月3万円ずつ返済していけば3年で完済できます。もちろん収入によっても返済可能な金額は変わりますが、利息抜きで分割払いをすれば2~3年で返済できそうな場合は自己破産は認められないでしょう。もちろん金利が高くて利息も大きい、という人もいます。そういう方は自己破産ではなく任意整理や個人再生で可能と判断され、自己破産はみとめられないでしょう。
そして自己破産には破産手続きを行う予納金(裁判所に支払う)が必要になります。同時廃止事件の場合は1万円で済みますが、管財事件の場合には20万円は必要になります。その費用が準備できない場合も自己破産手続き出来ません。
○免責不許可事由
自己破産できないケースには裁判所から免責が許可されなかった場合です。つまり、自己破産手続きをしても、免責不許可事由により自己破産出来なくなってしまうのです。
免責不許可事由にはいろいろなケースがあります。たいていは自己破産に対して不誠実な対応をした場合に許可が下りない事が多いです。
・不当な破産財団価値減少行為
自己破産すると一部を除く財産が没収されます。没収されないために財産を隠したり、親戚や知人に格安で売るもしくは譲渡したりする行為
・不当な債務負担行為
破産手続きの開始を遅らせる目的で、闇金やクレジットカードの現金化などをする行為
・不当な偏頗行為
支払期限でもないのに、自己破産前に一部の債権者に借金返済する行為
・浪費または賭博その他の射幸行為
高額の買い物や旅行などの無駄遣い、パチンコや競馬などのギャンブル、株やFXなどへの投資による借金
・詐術による信用取引
自己破産をするつもりなのに、偽って借金をした場合
・業務帳簿隠匿等の行為
自己破産をするための帳簿類などを隠した、偽造したりする行為
・虚偽の債権者名簿提出行為
自己破産はすべての債権者を名簿に載せなければいけませんが、偽って載せない債権者がいた場合など
・7年以内の免責取得等
前回に自己破産をしてから7年経過していない場合
自己破産ができない場合(奨学金やギャンブルや浪費について触れてください)
前述のように支払い可能と判断されたり免責不許可になってしまった場合などは自己破産出来ない場合があります。
では、自己破産ができない場合はどうしたらいいでしょうか。
まず免責不許可事由になるケースが多いのがギャンブルや浪費ではないでしょうか。一般の会社に就職して、特に贅沢もせず堅実に生活していれば自己破産するほどまでにはなかなかならないものです。たいてい借金をしてしまうのはギャンブルや浪費です。このケースでは必ずしも自己破産出来ないとは限りません。破産者本人が深く反省していることであれば、裁判官の権限で免責許可を得られることがあります。これを“裁量免責”といいます。
免責不許可の告知を受けた場合、その日から1週間以内に即時抗告すれば高等裁判所にて再度免責の判断をしてもらうことができます。
自己破産はできない場合は、最終的には自己破産ではなく任意整理をして利息だけ軽減・免除してもらうか、個人再生を申し立てて借金を減額してもらうしか方法はなくなります。また、免責不許可通知は債権者には送られないので、そのまま請求されないケースもあります。そのため、そのまま放置して消滅時効を待つという選択肢もあります。
自己破産を検討するケースとしては奨学金の借金が返済できなくなったというケースもあります。これ自体は自己破産できるのですが、奨学金の場合、たいてい保証人を設定しています。おそらく親や親戚でしょうが、自己破産すると返済できなかった分の残債は保証人の方に請求が行くことになり一括返済を求められることもあります。そのため気軽に自己破産というわけにはいかないでしょう。奨学金を自己破産したいと思ったのなら、まずは保証人になっている方に相談しましょう。保証人の方も急に多額の借金の一括返済を求められても厳しいでしょうから、その人まで自己破産に追い込まれてしまう可能性があります。それなら相談して、返済の手助けをしてもらうなどの方法もできるでしょう。
まとめ
自己破産は誰でもできると思われがちですが、状況によっては免責が下りず自己破産出来なくなるケース、そもそも返済能力があるために自己破産が認められないケースもあります。また奨学金のように保証人への影響を考え自己破産出来ないケースもあります。
自己破産出来ない時には、即時抗告する方法もありますし、任意整理や個人再生という方法もあります。ただ、それも状況によって異なりますから、まずは弁護士や司法書士などの専門家に相談をしてみて、その後の対応を検討してみるといいでしょう。